実は多い?マイホーム購入後の早期離婚
結婚を機にマイホームを購入したり、結婚からしばらくしてマイホームを購入する人はたくさんいますが、同じように結婚後、数年のうちに離婚してしまう人もたくさんいるようですよ。
厚生労働省が調査した「同居期間別にみた離婚件数及び同居期間の年次推移」を調べたところ、離婚件数全体のうち結婚から5年以内に離婚した人の割合は、平成2年で約37.8%、平成13年で約35.9%となっていました。
その他の同居期間と比べると随分と高い割合になっています。
実際、私のところに離婚にともなうマイホームの清算について相談に来られる方々の多くは、結婚して間もない夫婦がほとんどですから、まさに頷ける結果となりましたね。
もし、婚姻生活が長ければ離婚による財産分与としてマイホームを分ける場合でも、大きな問題にはならないでしょうが、こうした早期離婚の場合、買ったばかりのマイホームには住宅ローンがたっぷりと残っていることで、財産分与もままならない事態になる可能性が高いのです。
「マイホームがあるから離婚できない…。」こんな笑えない現実が、実は存在しているのです。
離婚によるマイホーム分与の憂鬱
マイホームを購入し、たっぷりと住宅ローンを抱えた状態で離婚に至るケースは珍しいものではありません。そして、この時に問題となるのが、その「マイホームをどうするか?」です。
協議離婚と言われるように、離婚に伴う財産分与は当事者間の話し合いによって行われるのが一般的ですから、預金などの現金や子供がいる場合の養育費などについてはお互いに納得できる解決策を見出せば済むことです。
ところが、住宅ローンを借りている状態のマイホームについては、当事者間だけの意思でその分与方法を勝手に決められるものではないから、やっかいなのです。
なぜなら、離婚当事者とは関係のない「金融機関の意思」が関与してくるからなのです。
民法では、抵当権者(金融機関)に承諾を得ることなく所有権の移転ができるものとされていますから、民法上は離婚によりマイホームの所有権を財産分与によって移転することに何ら問題はありません。
しかし、住宅ローンを借りる際に金融機関と取り交わす「金銭消費貸借契約」においては、『所有権の移転等を行う際には事前に通知し承諾を得ること』などといった条項を設けているのが一般的ですから、前述にある民法に則っていたとしても、抵当権者の承諾なしに行われる行為に対して、厳しいペナルティ(一括返済など)を受ける可能性が十分に考えられます。
つまり、現実的に考えると、いくら離婚を理由としたマイホームの財産分与であっても、抵当権者の承諾を得てから権利関係を動かすべきなのです。
そして、この承諾を得るには、マイホームを引き受ける側に残りの住宅ローンを支払っていけるだけの能力があることを、最低限の条件として求められるのが一般的なのです。
債務と婚姻状態は関係ない
マイホームを夫婦の共有財産として登記している人はたくさんいます。なぜ共有名義になっているのか、その理由はさまざまですが、住宅ローンを抱えた状態で共有者の立場にある場合には、二つに分けることができます。
@連帯債務者による共有の場合
A連帯保証人による共有の場合
どちらの場合も婚姻関係とはまったく関係がないということを理解しておく必要があります。
離婚したら、自動的に連帯債務者や連帯保証人の立場からはずれるということはありません。
つまり、離婚と同時にこれらの権利関係についてどう清算するのかも、当事者間で取り決める必要があるのです。
よくあるケースで考えてみましょう。
夫が主債務者で妻は頭金の一部を出したため担保提供者となり連帯保証人という立場にあったとします。
離婚をすることで、マイホームは妻が引き受けることにしますが、妻は専業主婦なので住宅ローンの引き受けはできません。
やむなく夫は家を出るにもかかわらず、住宅ローンの返済は負担することとし、家の権利だけを銀行に内緒で妻へ移してしまったとします。
このケースで、もし数年後に夫が住宅ローンの支払を滞らせた場合、妻はあくまでも連帯保証人という立場のままですから、夫にかわって住宅ローンを返済しなければならないことになります。
いくら離婚協議でローンは夫の負担と取り決めておいたとしても、金融機関に対しては何のいい訳にもなりません。
妻が夫に代わって住宅ローンの返済をすることが出来ないとなれば、当然に銀行側は抵当権の実行に移りますから、マイホームは競売にかけられることになってします。
これでは離婚によってしっかりと財産分与がなされたとは言いがたいと思います。
後腐れのない財産分与(売却・債務引受・夫婦間売買)
離婚によってマイホームを引き受ける側に、残りの住宅ローンを返済できる能力があれば、所有権(=共有持ち分)と債務をあわせて無償で譲ることによる整理が考えられますね。
一番、手間のかからない方法としては、『負担付贈与』と言われる方法がありますが、この場合、金融機関が(免責的)債務引受を承諾してくれるのを前提としますから注意が必要です。
具体的に言うと、正の財産である所有権と、負の財産である住宅ローンをそれぞれの価値(所有権は時価で評価します)で相殺し、その差額(結果として得をした人)に対して贈与税の課税対象とするといった仕組みのものです。
多くのマイホームが借入残高と時価がほぼ等しい状態にあることを考えると、負担付贈与による贈与税への心配はさほど大きなものにはならないでしょうから、住宅ローンの融資を受けている金融機関の承諾を得られれば、債務引受によって完全にマイホームを清算してしまったほうが後腐れがありませんね。
もし、離婚と同時にマイホームを引き受ける側がもっと有利な住宅ローンへの借り換えを希望するのであれば、夫婦間売買というスタイルをとり、まったく別の銀行へ乗り換える手段もあります。
債務引受にしろ、夫婦間売買にしろ前提となるのはマイホームを引き受ける側に住宅ローンの支払能力があることです。
この点が叶わないとなると、思い切ってマイホームを売却することで住宅ローンを一括返済し、手元に残った現金を分け合うのが、後腐れのない財産分与と言えます。
ただ、この場合も担保割れしていないことが前提となりますから、誰もが選択できる手段ではありません。
実際に離婚のことで銀行へ行ったら?
実際に離婚となった場合にどうなるのかをお話ししておきましょう。
まず、銀行に離婚に伴い名義を移動したいと相談したとします。
すると、銀行側はとにかく一旦住宅ローンの全額を返済してくださいと一点張りになることが多いようですね。
離婚協議の内容など関係なく、融資をした時の状況と現状とが変わるのであれば、とにかく一旦お金を返せということのようです。
その後で、すきなように財産分与しなさいということなんでしょう。
※公庫融資の場合は対応が異なる場合があります。
以前、本当にあったお話しとして、離婚のために一度は住民票を抜いた夫が、結局、銀行側の一括返済という強行な姿勢に取る術もなく、再び住民票を元に戻したということがあります。
なぜなら、銀行に離婚することを止めましたと偽ったところ、それなら証拠に住民票を提出して欲しいと言われたからです。
そこまでしなければ、銀行側はとにかく一括返済を求めてくるので、どうにもならなかったんですね。
この方の場合、不動産名義も住宅ローン名義もそのままで、夫婦間で金銭消費貸借契約を結び、住宅ローンの返済負担を取り決めたんですが、もし、返済が滞れば家を守るという点においては、たいした意味がないでしょうね…。
なにしろ、抵当権者が権利を実行すれば、家は差し押さえらてしまいますからね。
それでも、こんな程度の対策しか、マイホームを維持する手段がなかったというのが実情です。
これじゃ、おちおち銀行へも相談できませんよね。

ちなみに、住民票はしばらくしてほとぼりが冷めた頃、抜いたそうです…。
もちろん、銀行によって離婚相談に対する対応はさまざまで、親身になって相談にのってくれるところもあるようですね。
まぁ、どちらにしろ、結婚は1日で出来ても、離婚は本当に大変な労力と時間がかかるものなんですね・・・。
