普通借家権(普通建物賃貸借)の存続期間
借地借家法に基づく建物の賃貸借では、民法における賃貸借(最長20年まで・民法第604条第1項)が適用されないため、20年を超える期間を定めても構いません。
ただし、最低1年以上の期間を定めなければ、期間の定めのない賃貸借として扱われてしまいます。(借地借家法第29条第1項、旧借家法第3条の2)
なお、期間の定めがある賃貸借契約の場合、貸主は、原則として期間中の解約申入れはできません。また、借主も特段の定めがない限り解約を申し入れることができません。
建物賃借権の更新と更新拒絶・解約申入れ
賃貸借に契約の期間を定めた場合、原則として期間の満了をもって契約は終了します。(民法第616条、第597条第1項)
ただし、賃貸借の存続期間が満了した後に、借主が使用・収益を継続していることに貸主が異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で賃貸借をしたものと推定されます。(民法第619条第1項)
なお、借主がその義務に違反した場合、貸主は借主の債務不履行を理由に賃貸借契約を解除することができます。
ただし、当事者間において著しく信頼関係が破壊された場合に限り、契約を解除できるものとされています。
例えば、賃料の不払いなどの債務不履行により契約を解除する場合、貸主は相当の期間を定めて賃料を支払うよう催告をし、その期間内に履行がない場合、契約を解除できます(民法第541条)が、1回、2回程度、賃料の支払が遅延した程度では、著しく信頼関係が破壊されたとは言えず、これを理由とする契約の解除は認められないのが一般的な解釈となります。
期間の定めがある場合の更新
(ア)原則:更新
期間満了により、合意がなくても原則として更新されます。
(更新される内容→従前の契約と同一の条件)
(イ)賃貸人が更新を拒絶する方法
賃貸人の正当事由に基づき更新を拒絶する場合、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に更新しない旨の通知、又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなければなりません。
(ウ)使用継続による更新
建物の賃貸借の期間が満了した後も、賃借人が建物の使用を継続する場合、賃貸人が遅滞なく異議を申し述べなければ、契約は更新されたものとみなされます。

期間の定めがない場合の解約
1(ア)賃貸人からの解約申入れ
賃貸人の正当事由をもって、いつでも解約の申し入れをすることができ、解約申し入れの日から6ヶ月経過後に契約は終了します。
(イ)賃借人からの解約申し入れ
賃借人保護の必要がないため、借地借家法の適用がありません。解約申し入れから3ヶ月経過で契約は終了します。
賃貸人の正当事由
| 主たる要素 | 賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情 |
|---|---|
| 従たる要素 | 建物賃貸借に関する従前の経過・建物の利用状況・明け渡し料の給付の申し出 |
建物賃借権の対抗力
賃借人は建物の引渡しを受けていれば、登記をしていなくても建物を新たに取得した第三者の所有者に対して、賃借人であることを主張できます。(借地借家法第31条第1項)

※対抗力を持った賃借人がいる建物を買った新しい所有者は、前賃貸人の地位をそのまま引き継ぐことになり、当然に敷金関係も引き継ぐことになります。
※新所有者が賃貸人としての権利(賃料請求など)を主張するためには、所有権移転登記などを備える必要があります。
賃借人の死亡と建物賃借権の承継
建物の賃借人が死亡した場合、その相続人に建物賃借権の相続が認められます。
(1)建物賃借権の相続
建物の賃借人が死亡したときは、その相続人に建物賃借権の相続が認められます。
(2)事実上の夫婦等の居住権
相続人がいない場合には、建物賃借権は消滅するのが原則ですが、一定の同居者がいる場合には、その者の生活の拠点を確保しなければならないとされています。
つまり、内縁関係の妻が残された場合などは、被相続人の建物賃借権を承継することができるわけです。
※尚、あらかじめ、賃貸人、賃借人及び同居者の三者が、この居住権を排除する特約は有効です。
定期借家権
定期建物賃貸借
定期建物賃貸借は、存続期間を当事者で自由に設定(借地借家法第38条第1項)した上で、更新がない旨の特約を定めたもので、必ず書面により行う必要があると共に、更新がない旨を書面で説明し交付しなければなりません。
もし、この条件を満たさない場合には、普通建物賃貸借として扱われることになります。(借地借家法第38条第1項〜第3項)
【定期借家権の特徴】
- 契約期間を定める(更新がない)ことで、その後の自己利用性が高まる
- 立ち退きのトラブルを回避しやすい
- 売却が比較的容易なため、物件の流動性・換金性を維持できる
- さまざまな特約を付加することにより、賃貸人のリスクをある程度回避・軽減できる
【定期建物賃貸借のポイント】
- 期間の定めを必ずしなければなりません。
- 期間は1年未満の定めも有効です。
- 必ず書面で契約を交わさなければなりません。
- 契約書面は必ずしも公正証書である必要はありません。
- 更新のないことを説明しなければなりません。
取壊し予定の建物賃貸借
法令または契約によって、一定期間を経過した後に建物を取り壊すことが明らかな場合に、その建物を賃貸借するときは、建物を取り壊すこととなるときに賃貸借が終了する旨を定めることができます。(借地借家法第39条第1項)
この特約は、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によって行う必要があります。
